【体の酸化ストレス度 その1】 
 人の体は約60兆個の細胞で構成されているが、その細胞は酸化変性(酸化ストレス)に弱い。酸化変性とは、正常な細胞の分子が活性酸素など安定していない分子を持つ物質によって電子を奪われ、逆に安定しない状態になることを指す。
 「端的な例が“鉄“です。酸素によって錆びるとボロボロの状態になる。これが酸化変性です。細胞の化学変化を調べると、殆ど全ての病気で細胞が酸化変性されることが直接のきっかけになっている事が分かってきたのです」そう説明するのは、京都府立医科大の吉川敏一教授。吉川教授はビタミンなどによる活性酸素・フリーラジカル消去機能と疾病の予防研究で知られ、日本抗加齢医学会の副理事長も務めている。

 病気は細菌やウイルスの侵入、遺伝子異常、生活環境などさまざまな原因で起こるが、細胞の酸化変性を如何に抑えるかが病気治療・予防のカギともいえる。実際、狭心症や心筋梗塞患者には、血流の途絶え(虚血)から血流の再開(再環流)に伴う活性酸素による障害を防ぐため、抗酸化作用のビタミンEを投与するようになっている。脳梗塞治療でも抗酸化効果を持つ薬が使われている。

 細胞の酸化変性こそ万病の元といえるが、生物にはこれを防ぐ抗酸化システムも備わっている。SOD・カタラーゼなどの抗酸化酵素や体内に取り入れられたビタミン類・ポリフェノール類などの抗酸化物質が酸化変性を防いでいる。
 活性酸素などによる酸化力と生体内の抗酸化システムの働き具合の差が、酸化ストレス度といえる。酸化力が上回った時、病気の危険性が高まる。「特に、生活習慣病には要注意!生活習慣病になることで、酸化ストレスがさらに増幅されることが分かってきています」と吉川教授。
 いったい自分がどれほどの酸化ストレスに見舞われているのか!酸化ストレス度を測る方法がある...

活性酸素発生率 体内のエネルギー産生時に活性酸素群は必ず発生する。抗酸化酵素の働きで大部分が水などに還元されるが、2〜5%程度は体内に残る。96年に発見された抗酸化酵素のSODの活性度合は加齢とも関係していて、40才前後から低下する。
--- 2003/07/13、日刊スポーツ朝刊、体の危機管理より抜粋 ---

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その2その3
 【体の酸化ストレス度 その2】 
 酸化ストレス度を測定する検査は、一部医療機関で実施されている。酸化ストレスと疾病予防の研究で知られる吉川敏一・京都府立医科大教授は「DNAや体内脂質の損傷を示す物質が血中・尿中から検出できます。抗酸化物の血中濃度も分かります。そのバランスから、酸化ストレス度を推測しようというものです。将来的には、どの程度の酸化ストレスがどんな病気を起こすのか?の予測も可能になるでしょう」と期待する。

 測定キットなども開発している日本老化防御研究所の“酸化ストレスプロファイル“では、参加損傷を示すもの(2種類)・酸化前駆因子(3種類)・水溶性抗酸化物(5種類)・脂溶性抗酸化物(11種類)・脂質、が測定項目。健常者の数値を100として、それぞれを比較し、危険・警告ゾーン・低活性ゾーン・良好の4つの評価をしている。

 同検査を受けた38才の男性の例では、“危険“と判定され、生活習慣病の危険シグナルも出ていたが本人は気付いていなかったという。「生活習慣病は自覚症状が少ないことが怖い!酸化ストレスは病気を起こす実行部隊になります。糖尿病の3大合併症といわれる“神経障害““腎臓障害““網膜障害“は、毛細血管が硬化し、血流が低下するすることが原因です。その血管の硬化は酸化ストレスと大きくかかわっています」と吉川教授。

 酸化ストレス度は、生活習慣と密着している。体内で抗酸化物として働くビタミン類は食べ物から摂取するものだし(?)、精神的ストレスや化学物質(加工食品・排気ガス・タバコなど)も活性酸素の増加要因になることが分かってきている。
 酸化ストレス検査で“危険“と判定された38才の男性は、生活習慣の改善に取り組んだところ、2ヵ月後の検査では“良好“になった。吉川教授は「酸化ストレスは日常生活の中で改善可能ということです。そのポイントとなるのは、抗酸化物質です」という。

8-OHdG 遺伝子損傷を示す物質。遺伝子は4つの塩基で構成されるが、その1つであるグアニン(G)が酸化されたもの。修復過程で尿中に排泄される。同物質の排出量が多いほど寿命が短く、少ないほど長寿になることから老化の指標にもなる。
--- 2003/07/15、日刊スポーツ朝刊、体の危機管理より抜粋 ---

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その1その3
 【体の酸化ストレス度 その3】 
 活性酸素・フリーラジカルによる酸化変性を受けやすいのが、細胞膜といわれる。細胞膜はリン脂質で出来ている。油脂は食物の成分の中で酸素によって最も変化しやすい。細胞膜のリン脂質は、油脂と構造がよく似ているのだ。共通点は脂肪酸を含んでいることで、この脂肪酸が酸化変性を起こしやすい。

 「細胞膜の酸化変性を防ぐため大きな働きをしているのがビタミンE。脂溶性の物質で脂質の多い場所で抗酸化作用を発揮しています」と言うのは、吉川敏一・京都府立医科大教授。
 細胞膜のリン脂質は、酸化するとペルオキシルラジカルという物質を産生する。ビタミンEは、この物質を消し去る作用がある。寿命が長い動物ほど血中のビタミンE濃度が高い!という研究もある。

 ビタミンC、βカロチン(体内でビタミンAになる)、も抗酸化物質として重要。ビタミンCは水溶性だが、自ら酸化されることで細胞の酸化変性を防いでいる。体内の臓器では脳・心臓・副腎・角膜・網膜などにビタミンCが高濃度で含まれている。「βカロチンの役割は、EやCほど分かっていませんが、それぞれが協力し合って抗酸化作用を発揮していることは間違いありません」と吉川教授。
 活性酸素・フリーラジカルを発生させる原因となる紫外線を浴びている植物は、抗酸化物質を自ら作り出し持っている。代表的なものが、フラノボイド(大豆・タマネギ)・カロチノイド(トマト・スイカ)・アントシアニン(茄子・ブドウ・ブルーベリー)・カテキン(緑茶)・リグナン(ごま)などと呼ばれる色素。これらの色素を含む食べ物を摂取する事の有効性も研究されるようになってきた。

 「酸化ストレスを防ぐ事が、病気予防につながることは明らかです。亜鉛・セレンといったミネラルも抗酸化酵素の活性を高めます。酸化ストレスの防止策は生活習慣の中にあります」と吉川教授は強調する。

低分子カルボニル 糖・脂質・アミノ酸が酸化ストレスによって変化した物質。不安定な状態のため、タンパク質(細胞)と反応しやすく障害を引き起こすと考えられている。糖尿病・動脈硬化・腎不全・アルツハイマー病など多くの病気に関係していると見られている。
--- 2003/07/16、日刊スポーツ朝刊、体の危機管理より抜粋 ---

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その1その2